東京都 平出 様(写真左:ご夫婦で参加)
朝、仕事場から富士山が見えた時は嬉しくなって、1日がハッピーになります。でも今まで登りたいと思ったことは無かったし、運動もろくにしていないぼくが、この歳で登るなんて無理だな〜と思っていました。そんな今まで登山経験の全くないぼくが、「富士山に登りたい!」と思ったのは2021年の11月。
今回ガイドをしてくださった、富士山ガイドのレジェンド合力(ごうりき)の近藤 光一さんとの出会いからです。近藤さんのお話や書籍を読んで、「その年の2月に亡くなった父のいる天国にいちばん近いところに登って、亡き父にもう一度会いたい」と思ったんです。富士登山を何回もされている方からしたら、大それたことでもないのに・・・と思うかもしれませんが、4ヶ月前になって初めて、登山用品をそろえ始めたほどゼロからのスタートのぼくは、高尾山に登ること10回、「諏訪富士」と呼ばれる長野の蓼科山に登ること2回を経て、当日を迎えました。
実は、今回のツアーの参加日は、自分のスケジュールで都合がいい日、というだけの理由で決めていました。でも登山日の2週間前に、「登頂予定日が父の誕生日」に気がついたんです。父の誕生日を忘れてたのもどうかと思うけど、生前はその程度の関係性だったんです。ただ、それに気が付いた時、初めて、自分は父に導かれている・・・って感じたんです。
天気予報では、秋雨前線の影響で雲ひとつない晴天ではありませんでしたが、ご来光が綺麗に見えた時は感激でした。
吉田口登山道の頂上にたどり着いた時は、達成感でただただ嬉しかったです。そのぼくの喜びの様子を見てから、富士登山の目的を知っていた近藤さんから、「いい場所があるのでこれからそこに行きましょう!」と言われ、噴火口へ案内していただきました。
「信仰のために富士山に登った人たちはそこに魂が集まってくると考え祈りを捧げた」という神聖な場所だということでした。噴火口の周辺には八つの峰があって、それを蓮の花に見立てて、ここを一周すると極楽浄土へ行けると信じられていた、という話も聞き、もし父が生きて今日の誕生日を迎えていれば88歳だったので、八という数字が重なったことも偶然とは思えませんでした。
近藤 光一さんから、「今からおひとりにしますので、時間を気にせず、ここで心ゆくまでお父さんと語り合ってください」とおっしゃっていただきました。それを聞いた途端、何故か涙がとめどもなく流れてきて・・・人目もはばからず、声を出して泣きました。
ひとりになって少し落ち着いたところで、ふと空を見上げたら、太陽の光が大きな虹のような輪になって現れていることに気が付きました。それは父の顔のような、笑顔で見守ってくれているように思えました。全ては導かれてここにいる・・・、自分は生かされている・・・、と思った瞬間でした。
持ってきたポカリスエットで「父との再会に乾杯」し、持参した卵焼きを「父と一緒に食べ」しばらく過ごしました。ずっと涙が止まりませんでした。生きている時の父とぼくの親子関係は、必ずしも関係性が良かったわけではありません。亡くなる直前になって初めて、お互いのことを気に掛けるようになれた程度でした。
そこには少しの後悔があったのですが、父に会いたい!ただそれ一心に富士山登頂を達成できたことで、区切りが付いた気がしました。
応援してくださった皆さん、本当にありがとうございました。